【一日一作プロジェクト】「挑樹」を作った。オウム問題の続き。いきなりA県まで、オウムを連れて旅することになり、駅の窓口へと走る。
「オウムは特急列車に乗れるんでしょうか?」
A県までのチケットを見せながら尋ねる。「一緒に連れて行きたいんですが」。窓口のお姉さんは、にこにこしながら
「オウムは列車に乗れますよ。証明書も何もいりません」「ほんとに⁉︎何もいらないの?本当に?」「改札を通って、そのまま列車に乗ってください」
よかったーーーー!これがクリアーできないと、車で移動するしかない。次に、移動用キャリーのサイズを確認。これも問題なし。次に動物用チケットの値段を確認。
「おいくらでしょう?」「10ユーロです(約1500円)」
安っ。特急に4時間乗って、この値段。ここまで、とんとん拍子。窓口のお姉さんは、私のチケットを見ながらパソコンにデータを入力。
「あなたと一緒に、マラガからA県まで『往復チケット』でいいですか?」
その言葉に、はっとした。往復。ふつうの旅行ならそうだろう。一緒に出かけて、一緒に帰る。でも。今回は。私のチケットは往復なのに
「オウムは片道」
なのだ。行きは2人なのに、帰りは1人。その恐ろしい現実に直面し、ゾッとした。言葉がすぐに出てこない。声が、喉の奥で突っかかる。
「行きのチケットだけ・・・お願いします」
言葉にしながら、心が凍えそうになる。なんて悲しい旅だろう。行きは2人、帰りは1人。その現実をまだ受け入れられず、バスに乗ると涙が出てきた。
「私の悲しみより、オウムの幸せ」
ここに集中だ。心の準備ができていないうちに、次々と決断を強いられる。そんな激流の中に、今の私はいる。
家に戻ると、さっそく旅の準備。オウムの私物、おもちゃ、食べ物、お皿などをまとめる。私自身の1泊荷物はリュックへ。大切な書類(マイクロチップ証明、健康カードなど)はバッグへ。
「ひゅーい」「ぐわっ」
オウムが、いつものように作業場で遊んでいる。私たちの「あたりまえの日常」が壊れていく。自分が「永遠に失おうとしているもの」に、胸が潰れそうになる。
「水浴びしよっか?」「ぷぷぷっ」
さっそく床にプールを設置。「水をかけて」と催促してくるので、大騒ぎしながら水遊び。私の愛する日常。そして、これが最後の水浴び。
「次は日光浴だよ。羽を乾かそう〜」
テラスで2人、太陽の光を浴びながら。「終わり」を告げられ瞬間から、全てが「最後の〜」」になる。ベラを失った時も、毎日が「最後の〜」の連続だった。
「最後の日曜日」「最後の外出」「最後の日光浴」・・・
人生は、かけがえのない時間、瞬間の連続でできている。愛するものを失う痛みは、波のように何度も押し寄せる。ここを出たら
「もう2度と、この家に戻ることはない」
オウムも、私も。2人にとって新しいスタート。2人そろって新しい環境、人生への挑戦が始まる。
「挑樹(いどみじゅ)」
人生には、先がまるでわからなくても、突き進まなければならない時がある。かけるような、祈るような気持ちで。コラージュアート。
みなさま、すてきな1週間を。