【一日一作プロジェクト】「くー(Q)」を作った。フェリア後日談。その2。フラメンコドレスというのは
「背中にファスナーがあり、ホックをとめ、さらにひもで結ぶ」
しくみになっている。連日のフェリア出陣で、実は1番困ったのがこれ。1人なので、ファスナーを上げることはできても、ホックをとめ、ひもを結ぶのは難しい。そこで、はたとアイデアが。
「とりあえず地下鉄の駅まで行って、誰かに手伝ってもらおう〜」
誰かいるんじゃ(笑)。地下鉄とはいえ、マラガ郊外の田舎の駅なので、ホームには2〜5人くらいの客しかいない。お願いできそうな女性を探していると
「おぉお〜、地下鉄職員の女性が!」
さっそく、にこにこしながら近づいて行く。事情を話すと「もちろん、任せて〜」とすぐに背中のホックをとめ、ひもを結んでくれた。そして
「フェリア、楽しんで来てね〜」
と送り出してもらえた。さて。2日目。連日出陣なので、毎日この問題に直面。地下鉄のホームへ行き、辺りを見回していると、なんと昨日と同じ職員の女性が立っているではないか〜。
「あのー、今日もお願いできますか?」「もちろん。今日のドレスもかわいいね」
2日目ともなると、おしゃべりもする。窓越しに手を振って別れる。そして、3日目。ホームへ駆け込むと、なんと!また同じ職員の女性が。ここまで来ると
「あの〜、お名前聞いてもいいですか?」「バネッサよ。あなたは?」
すっかり打ち解けモード。列車が来るまで、ずっとおしゃべり。さて。4日目。私の目は、はなっからバネッサを探す(笑)。
「あっ、バネッサーーーー!」「こっちこっち」
手を振るバネッサ。もう毎日の儀式(笑)。さすがに大笑い。列車がホームには滑り込んで来ると、少し寂しそうな声で、バネッサが言った。
「明日から私は休みだから、もう手伝ってあげられないんだ。ごめんね」
なんだか、胸がきゅんとなった。つい4日前まで、何も知らなかったのに。バネッサの存在も名前も。それがどうだろう。たった5分の朝の儀式が、私たちを急速に結びつけた。ホームでお互いの姿を見つけるや、たちまち笑顔になってしまう。
「人生は、小さな物語で綴られていく」
こんな、ゆきずりのような。何気なく始まり、あっけなくて終わってしまう物語。でも、そこには心を通わせた瞬間があり。まるで、かけがえのない宝物が、ぽんと届けられたみたい。
よくよく考えれば「1人だから、誰にもドレスの着付けを手伝ってもらえなかった」とも言えるし「1人のおかげで、駅で声をかけるはめになり、バネッサに出会えた」とも言える。だから、人生はおもしろい。
「不運や不遇には、時として不思議な出会いがひそんでいる」
そして。フェリアの帰り道。当然のことながら、今度はまた誰か背中のホックをはずし、ひもをほどいてもらわねけれはならない(笑)。このままではドレスは脱げないのだ。
「さーて、どの人の頼もうか」
地下鉄の中で、女性を物色(笑)。毎日、自分の降りる駅が近づくと、さささっと目当ての女性に近づき
「あの〜、ホックとひもをといてもらえますか?家で1人なので」
帰りは、毎回違う方々に(笑)。「怪しいホック女」出現!(私だ〜)。そんなこんなで、たくさんの方々に助けていただきながら、フラメンコドレスで連日出陣。みなさまムーチャス・グラシアス!
これにて、フェリアレポートも終了。日本は低気圧が停滞しそうですね。お身体を大切に。みなさま、すてきな1日を。