【一日一作プロジェクト】「五聖獣・1」を作った（2022年の作品を紹介中）。昨日の続き。

「薪屋さんへ行くのはもう来年でいいね」

意気揚々と家に着いた、その時だった。あ、あ、あれ？ない。ポケットに入れていたはずの。いや、そんな。えっ、まさか。あわてて車へ戻り、座席、床、車庫の中を探し回る。

「・・・ない」

血の気がすぅ〜っと引いていく。さっきまでのテンションマックスからの、奈落の底。リビングでほっこりお茶を飲もうとしている父に向かって、爆弾発言。

「お父さん、スマホがない」「ええっ？はぁっ⁉︎」

父も一緒になって、あちこち探し回ってくれる。車、玄関、車庫、服、バッグ・・・。ない、ない、どこにもない。2人ではっと顔を見合わせ

「薪を積んでいる時に落としたんじゃ」「すぐ薪屋さんに戻ろう！」

力強く言い放つ父に「10分後に出発するから、水を飲んでトイレに行って休んでおいて」とお願いする。なんせ、車で移動するには

「まず車に積み込まれた薪をおろさねばならない」

それも最短スピードで。こうなると「できるのか？」は存在しない。するのだ。やりゃあいいのだ。軍手をはめ、すわった目で薪に挑む。さっきまで「重く」感じていた薪が

「なんて軽いことか〜」

重さなんて全然感じない。両手で薪をつかみ、ぽんぽん車庫の隅に放り投げる。アドレナリンってすごいな。一瞬の休みもなく、疲れを感じることもなく、あっという間に薪の全てを積み上げる（写真10枚目）。

「ええっ⁉︎もう全部下ろしたの？」「行こう！」

アドレナリンの力はすごい。そして30分後、私たちは再び薪屋さんにいた（もちろん何度か電話もしたが、おじさんは作業中なので電話に出ない）。

「えーーーっ、スマホを失くしたの⁉︎」

作業の手を止めて、おじさんも一緒に探して始めてくれる。もともと用がなければ誰も通りらない、町はずれの小道。そばにある工場にも顔を出し

「すみませーん。スマホ落ちてませんでしたか？」

作業服のお兄さんに声をかける。「スマホを失くしたの⁉︎めちゃくちゃ困るよね〜」。お兄さんは親身になって一緒に探し始めてくれる。これで捜索隊は4人になった。父、薪屋のおじさん、工場のお兄さん、私。

「ないなぁ」「あっちの事務所に聞いてみよう」「側溝に落ちたか」「ゴミ捨て場も見てみよう」「呼び出してみたら？音がするじゃん」「それが消音モードになっていて」「ダメか〜」

1人だったら、きっと打ちのめされていた。でも、こうして心配して一緒に動いてくれる人がいる。助けてくれる人が。それだけで、人は前向きになれるのだ。

「警察に届けないと」「電話会社か」「実はスペインの電話なんです」「えっ？」「はっ？どういうこと⁉︎」

みなさんを不安の渦に巻き込む〜。「実はスペインに住んでいて、薪を買いに来た」ことを告げると、おじさんとお兄さんは

「スペインから薪」

と、ぽかんとした表情。結局、スマホは見つからず、おふたりにお礼を伝え「もし見つかったら連絡し合う」ことにして、薪屋を後にする。

こうなったら、家の中を徹底的に探すしかない。車、車庫、玄関、廊下、自分の部屋と、動いた場所全てをくまなく探す。帰宅時の自分の行動を思い出しながら。

「トイレと洗面所・・・あとは服だけ」

あきらめが全身に広がる。気分はすでにダメもと。今日、自分が着ていた服、全てのポケット、手袋、マフラー。さらに、帽子に手を伸ばしたその瞬間・・・

「うそ・・・あった」「はぁっ⁉︎どこどこどこに！」

父が飛んでくる。なんでこんなところに。理由はわからない。が、スマホは「帽子の中」にあった。どうやら無意識にスマホをポケットから出し、脱いだ帽子の中に入れたらしい。

薪に気を取られたがゆえの、無意識の動き。恐るべし。ほっとしたとたん、へたり込みそうになった。安心感がじわっと広がり、アドレナリンが急速にしぼんでいく。

「お父さん、ごめんね。一緒に探してくれてありがとう」「見つかってよかったよ〜」

父にも笑顔が戻る。こんなドタバタに巻き込んでごめんよー。だいたい父のかかりつけのお医者さんに

「あまりお父さんに刺激を与えないように」

と言われているのに、なんちゅう〜。退屈ではないにしても、あまりに刺激的な日々。また先生に叱られちゃうな〜。

さて。薪屋のおじさんに連絡を入れ、お礼とお詫びを伝える。なんという初対面。遅めのランチ&昼寝の後は、気を取り直し、先日組み立てた薪置きラックに

「薪を投入」

やっとここまで。もう夕陽が〜（笑）。感慨ひとしお。薪を手に父もうれしそう〜。とりあえず、玄関先と車庫の2箇所を薪置き場に。

「あとは屋根を取り付けるだけ」「大晦日は雨みたいだよ」「シートでもかぶせとくか」

父と2人、手を合わせて乗り切った2023年。お父さん、おつかれさまでした。私に耐えてくれてありがとう（笑）。明日はいよいよ大晦日。新年を迎える準備をしなくちゃ〜。

今年もあと2日。みなさま、すてきな1日を。