聖獣と社

【一日一作プロジェクト】「聖獣と社(やしろ)」を作った(2022年の作品を紹介中)。名古屋の夜。カウンターで不思議な出会いが待っていた。

「このサングリアって何が入ってますか?」

お店のお姉さんに尋ねる。スペインの飲み物だけど、日本風にアレンジされている可能性も。「えっ、あっ、ちょっと聞いてきます」走り去る後ろ姿を、ぼーっと眺めていると

「赤ワインにかなりのスパイスが入ってます。私も飲んだことあるけどおいしいですよ」

答えてくれたのは、隣で1人で飲んでいた若い女性。全身鮮やかなおしゃれな服に身を包み、ファッション関係の方かな、と思っていた。

「じゃあ、それにしよう。あなたが飲んでるのは?」「このビール、お煎餅みたいな風味で香ばしくて。めちゃおすすめです」

「よく知ってるんだねぇ」「週一くらいで来てるんで」「私は初めて。スペインから来たの」「名前を聞いてもいい?」「お仕事は?」

それから一気に距離が縮まり、私たちはカウンターでのんびりおしゃべり。なんと「先生」をしているという彼女。「仕事中はこんな格好じゃないですよ」と笑う。私は「答えたくなったらいいけれど」と前置きして

「あなたがやってみたいことは何?お金や時間は置いといて。人生でこれができたら幸せだな、っていうこと」

彼女がふっと黙り込んだので、私はしばらく1人でサングリアを飲み続けた。初めて会った者同士が、こんな話をしている不思議。30代の彼女に、ふと20年前の自分を重ねてしまう。

「人生を切り拓いていくのに必死」

だった頃。音楽屋として。慣れないスペインで。結婚をして子供を持つと言う、一般的な道から大きくはずれた己道を、必死で生き抜いていた。その時、彼女が、そっと口を開いた。

「そんなこと、今まで考えたことなくて。ちょっと待って。今考えてる」

行きずりのような私の問いかけに、真剣に答えようとしてくれる姿に、ほろりとなった。そして、彼女は言葉を選びながら

「今思いついたんだけど、○○できたら幸せだな。○○することが好きだって、今気づいた」

そんな瞬間に立ち会えたことが、うれしかった。私も若い頃、尋ねられることで自問し、答えに出会うことがよくあった。

人生についておしゃべりする私たち。周りから見たら、知り合い同士に見えたかも(笑)。行きずりのような人とのなにげない会話が、人生を変えるきっかけになったりする。だから人生はおもしろい。

「じゃあ、私は行くけれど。あなたの人生を応援してるね。がんばって」「ありがとうー」

ハグの代わりに手を差し伸べて、握手。たった1時間前まで、私たちは互いを知らなかった。名前も存在も。何も知らずにこの店に来て、1人カウンターに座った。こんな出会いが待っているなんて、誰が想像しただろう。

「無計画とサプライズ」

は相性がいい(笑)。さて。翌日、無計画ならではの問題が発生。画材屋に注文しておいた大量の絵の具。これを、近くのコンビニから宅配便で自宅まで郵送するのだけど

「重くてダンボールが持ち上がらない」

のだ〜(涙)。3辺合計140cm。20キロ。スーツケースみたいな「形状」があるから持ち上がるのであって、紐も取っ手もないダンボール箱など、どうすりゃあいいのだ。だいたいこの段ボールの箱詰めだって、店の前でテープとハサミ持参で自力でやったのだ。

「すみませーん、カートお借りできませんか?」

画材屋さんに尋ねると、調べてくれたものの「ない」と言う。呆然として立ち尽くしていると、見るに見かねた職員の方が「別の所にあるかも、ちょっと探してきます!」と走り去って行った。待つこと10分。

「ありましたーーーっ!」「おぉお、ありがとう」

2人がかりで20キロの荷物をカートへ。それだけでもありがたいのに「私がコンビニまで押して行きます」。なんて頼もしい〜。

「ありがとうございました」「絵の具が無事届くといいですね」

画材屋のお姉さんは、にこにこして去って行った。本当にみなさんに助けられてのドタバタライフ。ムーチャス・グラシアス!これもアートの神が結んでくれたご縁。コンビニから出ると

「神社を発見」

栄の都会のど真ん中にぽつんと。忽然と現れたような。誘われるように神社の中へ。まずは阿吽像が迎えてくれる。そして、何より私の心を鷲づかみにしたのは、聖水を守る猛々しい龍の姿。ものすごい迫力。

「今年は『聖獣』でいこう」

お参りをし、その足でランチへ。久しぶりのタイ料理。パクチー好きにはたまらん〜。チキン、ジャスミンライス、スープ、サラダでエネルギーチャージ。さらにお店をいくつか回り、名鉄に乗り込む。岡崎の乙川を眺めながら豊橋へ。

次の名古屋行きは、ゆったりのんびり食事会がしたいなぁ。集まれそうな人で宴会などいかがでしょう。名古屋に集合だ〜!

みなさま、すてきな1日を。

 

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