手続き問題・14

【一日一作プロジェクト】2022年の作品群を紹介中。「手続き問題・14」。ポルトガル行きの準備を進めていると、緊急メールが厚生労働省機関(検疫所)から届く。

「これまですでに100通以上」「怒涛の質問メールをほぼ毎日、毎週送っていた」

ので、所内で私たちを知らない人はいない。はず。何度「ノー」と言われてもあきらめないので、きっと呆れているだろうけれど、それでも情報に変更があると連絡してくださる。

「ももきみどり様、取り急ぎご連絡を・・・」

誰が想像しただろう。そのメールから、私たちの運命が大きく変わり始めることを。日本との時差が7時間あるので、夜中でも目が覚めると、

「大事なメールが届いているかもしれない」

とメールをチェックするのが習慣に。いつものようにベッドの中で薄目を開けながら、スマホを触っていると、私の目は「その1行」に釘づけになった。

「スペインから日本へ鳥の輸入ができるようになりました」

えっ?ええっ⁉︎思わずベッドから飛び上がる。なんと、鳥インフルエンザが発生していない国として正式に認められ、厚生労働省の定める指定国にスペインが追加されたというのだ。

「これでスペインで書類を取得して、スペインから飛行機に乗れる〜〜〜!」

信じられない展開に、アドレナリン、ドーパミン、歓喜のホルモン大放出。夜中から目がらんらん〜。ついに、私たちに扉が開かれた。ここまで回り道をしたけれど、ついに。

朝1番で動物輸出入業者へ連絡。ポルトガル作戦をすぐに中止し「スペイン作戦」に切り替える。実は1ヶ月前の打合せ時に、

「日本だけがスペインからの鳥の輸入を受け入れてくれない」「他の国はスペインからの鳥の輸入を許可しているのに」

と教えてもらい、実際にカナダやドバイなどに向けてこれから旅立つ「オウム」たちを見せてもらった。その子たちを励ましながら、日本の国境が開かれることを、天に祈った。

「すぐに動きましょう。再び国境が閉まる前に」

動物輸出用業者の方々の助けを借りて、さっそく必要書類の申請を開始。ココはワシントン条約の絶滅危惧種・カテゴリー1(最上級)なので、

「特別な輸出許可証」

がいる。これが発行されるのに「平均3ヶ月〜半年」これが最初の難関。さらに「衛生証明書」。これも、犬や猫なら動物病院でさらっと作るもので十分なのだが、ワシントン条約の絶滅危惧種カテゴリー1となると、

「スペイン政府の定める隔離施設で21日間以上隔離」「政府の獣医師による検査」さらに「スペイン政府の公の証印とサインの入った、スペイン政府発行の衛生証明書」

と、ハードルが一気に上がる。ココと暮らし始めた20年前、まだヨウムは絶滅危惧種カテゴリー1じゃなかったんだよね。だから、今よりずっと規則がゆるく移動も楽だった。それがいつの間にか

「ゴリラやキリンと同じカテゴリー1に」

勝手にアップするな〜。とにかく、これからはスペインで、スペイン語で、スペイン政府とやりとりができるのだ。その歓びで、私は久しぶりに心穏やかに眠った。たぶん数ヶ月ぶりに。

「悩みがなく眠れる」

って、なんてすばらしいんだろう。心配事がなく、家族の命が守られて。心穏やかに日常の中に身を置ける幸せ。フランスとポルトガルの資料を片付けながら、メール&翻訳しまくった日々を過去にできることに感謝。

その時、私たちはまだ知らなかった。「これで全てうまくいく」と思った矢先、厚生労働省からとんでも仰天メールが届くことを。「ノー」の100本ノックは、まだまだ続くのだった。(つづく)

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