【一日一作プロジェクト】2022年の作品群を紹介中。「手続き問題・16」。難関とされていた「輸出許可証」が1ヶ月で発行され、
「あとは衛生証明書だけ」
この「あとは」が、これからの長きに渡る悪夢の始まりだと、誰が想像しただろう。衛生証明書には、動物病院で発行される「健康診断書」的なものと、政府が発行する「公の証明書」がある。もちろん私たちが必要なのは後者で、これは
「スペイン政府と日本政府によって決められた正式な書式(政府のロゴも入っている正式な文書)」
厚生労働省機関より、ホームページからこの書式をダウンロードし「スペイン政府に必ずこの書式で発行してもらえるよう」確認するよう教えてもらう。
「衛生証明書はこの書式一択」
これ以外では一切受け付けない。このルールは絶対。と繰り返して説明を受け、重要性がひしひしと伝わってくる。さっそく書式をダウンロード、スペイン政府に確認するも、その回答は驚くべきものだった。
「ペットのオウムには、この書式は使えません。これは商業用の鳥のための衛生証明書です」
はっ?えっ?使えないって???あわてて詳しく尋ねるも「使えない」の一点張り。動物輸出入業者のMさんに間に入ってもらい「ペットの鳥はどうしたいいのか」確認すると、
「現時点では、ペットの鳥に該当する衛生証明書がないので、発行できないとしか」
と、やんわり逃げられる。そんな。ただ健康だって、病気を持っていないって証明できればいいんでしょ?書式うんぬんって、なんなん⁉︎あまりのショックで言葉も出ず、へたへたとしゃがみ込む。
それも、ココの健康状態とは全く関係ない「ペット用の書式がない」という理由で。売り買いする鳥ならよくて、ペットはダメなの?どういうこと?
「新しい書式を作る方向で動いています」
と返事をもらうも、お役所仕事なのでいつになるのか。ショックで顔がぴくぴくし、なんとなく胃が重い。スペインの扉が開いたと思ったとたん。こんな仕打ちに。希望から絶望へ。まっさかさま。
「ココ、衛生証明書を出せないって。ひどいよね」「ぷぷぷっ」
この子がいる限り、私は笑っていよう。お母さん、まだまだやるよ。新しいアイデアも浮かばぬまま、厚生労働省機関(検疫所)へスペインの返答を伝えると「そうですか」と残念そうな空気が漂う。
「新しく書式を作る、変えるとなると、ニ国間協議が必要になります」「二国間協議?」「スペイン政府と日本政府が話し合って決めることになります」
はぁっ???そんな大がかりなことなの?たかが、衛生証明書の項目に「ペット」って入れればいいのでは?動物輸出入業者のMさんから
「これは時間がかかるかも。もも、残念だけど私たちには政府の決定を待つことしかできない」
と静かに告げられる。そんな。輸出許可証はすでに発行されたというのに。その期限だって半年で切れる。いや、その前に鳥インフルエンザが再開し、日本への国境が閉まってしまうことだって。
「時間がない」
私たちには。その前に、スペイン政府と日本政府は新しいペット用の書式を作ってくれるのか。それをただ、待っているだけなのか。私の中で
「いや、ちがう。待っているだけなんて私の人生じゃない。何かできることがあるはずだ」
燃えるような怒りと情熱が、腹の底から湧き上がる。今、私にできること。それだけをひたすら考え続けていた。(明日に続く)