正確には叔父さんなので
「秀雄おじさん」と呼ぶのが
正しい。
でも、12歳しかちがわず
一人っ子のわたしとって唯一
「お兄ちゃん」と呼べる存在
だったので、今だに秀兄ちゃん。
秀兄ちゃんは夏休みになると
よくうちに遊びに来てくれた。
小学生のわたしに「星の王子さま」
をプレゼントしてくれたのも
秀兄ちゃんだった。
「よくわからないと思うから
大きくなってもう一度読むように」
と、11歳のわたしに
秀兄ちゃんは命令した。
昭和54年8月20日に。
それから、わたしは何回か、この本を読んだ。
言いつけどおりに。大きくなるにしたがって。
そしてスペインに渡るとき、スーツケースに入れる本に、この本を選んだ。
まさか、秀雄おじさんご本人は、自分の贈った本がスペインに渡って
まだ、数年に一度、読まれているとは思ってもいないにちがいない。
べラに、このエピソードを話したら、とても会いたがった。
何をかくそう、「星の王子さま」のスペイン語版をプレゼントしてくれたのは
べラなのだ。
「うわばみが象を飲み込んだ絵」は、べラが世界でもっとも好きな絵だ。
11歳のわたしに、こんなプレゼントをしてくれた秀兄ちゃんに
来月、会えるのを楽しみにしている。
それも20年ぶりに。
あのとき、伝えなかった「ありがとう!」を、34年後の今、言いたいと思う。