スペインでは、ごみが「365日、24時間」いつでも捨てられる。
これが「とんでもない」ことであると気づいたのは
日本で、両親と団欒しているときであった。
「ところで、スペインのごみの日、っていつ?」
最初のうち、質問の意味がわからず、わたしはぽかんとしていた。
「この辺りはねー、火、木の、6時半から8時半!」
日にちの指定だけでも驚いたが、仰天したのは「時間の指定」があることだった。
それも、マラガ人がもっとも苦手とする「早朝」に、「たったの2時間」。
「すごい・・・でも、みんなそれ、守れるの?」
おそるおそる尋ねると、母は威厳をもって答えた。
「当たり前ですっ!」
こんなルールをきちんと守れる日本人は、すごい。
日本人のみなさんは当たり前、と思えるかもしれませんが
これは、とてつもなくすごい。
わたしもかつて日本人であったはずなのに(今もじゃ)
いつから、こういうことに心から驚くようになってしまったのか。
事情をべラに訳すと
「それは・・・ジョーク?まさか、みんなそれを守ってるの?」
と、驚きを隠せない。
スペインのごみ箱は、365日、24時間あいている。
まるでコンビニみたいなごみ箱。あっ、マラガにコンビ二は存在しないのに(笑)
もし、スペインで
「これから週に4時間しか、ごみを捨てられません!」
と言ったら、どうなるのだろう。すごいことになりそうだ。
ところで、マラガでは今週、「ごみ回収車のストライキ」があった。
劣悪な労働条件を見直してほしい、という切実な訴えがあったので
一般市民もそれなりに理解を示していたし、わたしも応援していた。
こんな大切な仕事をしてくれるのだから、もっといい待遇をされるべきだと思う。
今まで、ごみを回収してくれていた人たちが、数日休んだだけで
マラガのごみ箱は、すごいことになった。
なにしろ365日、24時間、捨てているのだから膨大な量である。
ごみ箱に入りきらず、日の日に箱の周りの山積みになっていくごみ。
あらためて、自分たちが毎日作り出しているごみについて、考えた。
ごみ問題を論じながら、わたしたちは家の近くを散歩していた。
そのとき「あっ」と、べラが声をあげた。
「もも!すごいよ、これ・・・」
わたしたちの目の前には、工事用ごみ置き場に置き去りにされた
一週間分のごみ、板、扉、家具・・・が、山のようになっていた。
「ストライキのおかげで、残ったんだよ!」
わたしたちは「塞翁が馬」を思い出し
「人生何が幸いするかわからない」と繰り返しながら
両手に抱えられる限りの板を、持ち帰った。
「これで台所、リフォームできるね!」
と歓喜の声を上げるわたしとは対照的に、べラは肩を落として
「日本ではあんなに豪遊してたのに、マラガに戻ったとたん板拾い・・・」
と、さみしげにつぶやいた。