ニッポン行きの飛行機に腰をおろしたわたしたちは、ようやく
「ニッポンに行って何がしたいか」
を、落ち着いて話し合える心境となった。
心身とも落ち着いている、とはなんとすばらしい状態なのだろう。
こうして、日々暮らしたいものである。
今朝、起きてから「5階から自力スーツケース下ろし」に始まり
「パリの無謀・乗り換え1時間」と、すでに全力を使い尽くしていたので
座席にゆったりしているだけで、猛烈に眠くなってくる。
何もしなくてよい、とは、なんという贅沢なのだろう。
うつらうつらしていると、前方から「ドリンクのサービス」が始まった。
「赤ワインくださいっ!」
べラは、幸せそうに注文した。わたしたちは「ニッポン上陸の前祝い」として
威勢良く、乾杯をした。続いて、食事が運ばれてくると
不況でこの一年間「外食なし」生活を強いられていたべラは
「もも、今年初めての外食だよ~」
と、機内食に向かってつぶやいた。
12時間後、飛行機は無事ニッポンに到着し、
両親が待っている「豊橋」へと、向かう。
べラは一年ぶりに会う、とみ子さん・のぶゆきさんとの再会に心を躍らせていた。
なにしろ母から、
「べラちゃん、やせたら1キロにつき賞金あげるからね!」
と、約束されていたので、昨夜も体重計に乗り、最後の体重測定を行っていた。
「よし、5キロやせてる!」
満足げにうなずきながら、背中を丸めて体重計をしまうのを、わたしは見た。
ベラのダイエットは「炭水化物のかわりに野菜と果物を食べる」というものである。
これで、4ヶ月かけて5キロを落としたのだから、やるものである。
今日はいよいよ、その4ヶ月の成果、
贅肉を落とした美しい肉体を披露する日。
「夕食は、豊橋で回転寿司だって!」
「はーい!ととまるー(魚魚丸)!」
一年前に行ったお店の名前まで、べラは覚えていた。
なんだか、不憫になる。
なにしろ、スペインでわたしたちの生活から「外食」「お買い物」が消えて
もう1年になる。まだ生活できるだけ、いい方。
べラは、やせて母からもらうお金で
今回、唯一の観光旅行である伊賀忍者村へ行こうと考えていた。
(「ニッポン再発見記・3」につづく)