車の好みで発覚した新事実

先日、友人宅に集まり、総勢7人で昼食をしていたところ
突然、ご主人であるスペイン人のMさんが
「車の好みを、みなさんにお聞きしたい」
と、おっしゃった。いちおう大先輩なのでみんな静かに従う。
「それでは、女性の御三方に伺いましょう」

「わたしは、スポーツカー!」
まず、一番若い女性が答えた。
「色は?もっと具体的に」
Mさんがてきぱきと指導する。
「真っ赤。最新モデルね。フェラーリとかポルシェ!」

続いて、50代の女性がアンニュイな口調でおっしゃる。
「わたしはセダン型。シルバーで、しっとりかっこいい感じの。
スマート感、って大切よね」

次は、わたしの番である。
口にこそ出さないが、実は自分の車に対する好みが
みなさんと明らかにちがうので、ひとり戸惑っていた。
わたしの頭には、車種も、色も、浮かんではこなかった。
「ももは?」
「えっと。わたしは・・・機種や型、色や年代は、何でもいい。
ただ、丈夫で頑丈なの!ちょっとやそっとで壊れないヤツ。
中古でもいい、外見はどうでもいいから」
そして、正直な気持ちをつけ加えた。
「わたしといっしょに、どこまでも旅してくれる車!」

Mさんは、満足そうにうなづくと「宣告」を下すように
それそれ3人の女性のだんなさん(もしくは恋人)に向かっておっしゃった。
「これはズバリ、男の好みなのですよ、みなさん!」
「ええーっ!」
それまで、和気あいあいあと進んでいた昼食が
一瞬、奇妙な具合に中断された。

3つのカップルは、互いに顔を見つめ
女性は自分の言ったこと、男性はパートナーが言った言葉を
それぞれ思い返していた。

「スポーツカー」も「セダン」も、確かかっこいい!という言葉が
使われていたような気がする。
わたしは確か「外見はどうでもいい」と、言ったような・・・
そのとき、べラの表情がゆっくりと動いた。
「ももは、外見はどうでもいいの?」
「いやっ・・・その」
「僕は、かっこよくない」
「ちがうよ」
「中古で、ぼろぼろでもいいんだ!」
「・・・・・・」

呆然とするわたしに向かって、ご主人であるMさんは
助け船を出してくれた。
「でも、すてきなことも言っていましたよ。
『わたしといっしょに、どこまでも旅してくれる車』って・・・」

べラの機嫌は、しばらく直らなかったが
「じゃ、べラはどんな車が好きなの?」
と、聞いてみることにした。
これだって、女性の好みかもしれないではないか。
すると、しばらく考えて
「壊れないの。確かに」
と答えた。そして、わたしの肩に腕を回しながら
「僕は、ニッポン車が好きですっ!」
と、力強く言い切った。

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