豊橋の実家に戻り、わたしたちはのんびり、リビングでお茶を飲んでいた。
「どこもすばらしかったけど、ここが一番おちつくー」
と言いながら、べラは床暖房の入ったリビングで
なにか太った大きな動物のように、ごろごろしていた。
正称はコスモドクター言うが
うちでは「電気ショック」と呼ばれている器械がリビングにおいてある。
「はい、べラちゃん、電気ショックやるよー」
「はーい」
この上でシエスタ(お昼ね)をすると、10分で眠ってしまうらしく
父に毛布をかけられながら
「ああー、また眠らされてしまう・・・」
と、つぶやいていた。
夕食前、両親からベラへ「贈答式」が行われた。
まずは「XXXXLサイズの服」。
特大サイズのバーゲンがあるたびに、買いためておいてくれたらしい。
お次は「XXXXLサイズの靴」。
どこで尋ねても「そんな大きなサイズは作られていませんねぇ」と
断られ、やっと見つけた貴重な一足。
そして、「賞金」。
べラが5キロやせたことへのご褒美。母のカードには
「これは、体重減量に日々、努力された賞です!」
と、書かれていた。訳してあげると、深くうなづきながら
「日々、おべんきょう!生涯、おべんきょう!」
と、力強く答えた。
父からは100均の黄色い「サイフ」をプレゼントしてもらった。
べラが日本に来て、1円も持たされていないのをかわいそうに思い
「自分のサイフがあれば、お金だって入れられる」
と、100円玉10枚つきのサイフである。
「とみ子さん、ありがとうございますー!
のぶゆきさん、お世話になりますー、ありがとう!」
と、べラは日本人のように頭を下げ、ていねいにお礼を言っていたが
「じゃ、べラちゃん、試着しますよ~」
の母の一声で、恐ろしい試着ショーが始まった。
「はい、これ、Tシャツね、あーぴったり!」
「次は長袖の、あぁ、似合ってる似合ってる」
「こっちのは色ちがい、あぁいい感じ~」
次から次へと服を着がえさせられるベラは
「一生分の服を、着てる・・・」
と、つぶやきながら、まったくされるがままになっていた。
「すごい光景だな・・・」と、思った。
べラは完全に、両親の「着せ替え人形」になっていた。
(「ニッポン再発見記・10」につづく)