１年ぶりに会う後藤ＫＫ（係長）＆クロ隊長は、あいかわらずの仲良しさんだった。
わたしたち４人は、栄にある「おでん屋」へ直行。
上品でこじんまりとした、料亭風のお店。
しっとりとお上品な店員さんの応対に
「ここで本当に、スペインすごろくをやってもいいのだろうか・・・」
と一瞬、すごろく盤を抱える手が、固くなる。
が、たしかニッポンは「お客様が神様」だったはず。
神様に文句を言うことは、そうそうないであろう。
なにしろスペインでは、お客様はけして神様ではない。
満員のときは３０分でもほったらかしで、呼んでもアテンドしてくれないし
暇だと店員のやる気がなく、おしゃべりばかりしているし
外国人と見るや、請求料金は３倍にはねあがる。
ニッポンは、楽しく飲食しているお客様に対して
「当店で、すごろくなどされては困りますっ！」
とは、きっと言い出さないにちがいない。
ま、そうなったらそうで
「スペインから来たんです、このために」
と、泣き落としでいこう。
さて、名古屋名物の味噌味のおでんや、出し巻き卵などを堪能しながら
あっという間に時間は過ぎていく。
仕事をしていると、ときどき時間が止まったように感じることがあるが
今日は、またたくま。
近況報告やお土産渡し、べラに料理の説明などをしているうちに、もう９時。
あわてて隠し持って来た、すごろく盤を取り出す。
「じゃじゃーん！スペインすごろくです」
「おおーっ」
後藤係長の目がキラリと輝き、一瞬でやる気になったのがわかる。
「まず、アペリティフとして、オカゲームから始めます」
「オカゲーム？」
「オカとは、あひるのこと。サイコロを振ってあひるの絵のところに止まったら
次のあひるまで飛べます」
「なるほどーふむふむ」
頭脳労働に従事している後藤係長とクロ隊長の頭が
急速に回転し出したのがわかる。
クロ隊長が上半身を、ぐいっとテーブルに乗り出してくる。
これはいいゲームになりそうだ。
「じゃ、始めます！みなさんコマを持ってください」
「コマって、これ？この紙の切れ端？」
「すみません、コマ忘れて来ちゃって・・・」
「しょうがないなぁー」
謝っていると、会社員時代に戻ったよう。
「ああーっ、あひる！飛べるんだよね、ぴょーん」
「わあぁ～、しまった、一回休み」
「後藤係長、４だけは出さないでくださいね。４出すと振り出しに戻る、ですよ」
「よーし！えいっ・・・・あっ」
「・・・・・・・・」
なぜなのか。
後藤ＫＫのときだけ、きれいに「振り出しに戻る」に当たる。
あまりの不運さに、わたしたちだけでなく、お隣のカップルまで大笑い。
後藤係長が何回か振り出しに戻っているあいだに
わたしたち３人は、全てのコマがすっかり上がってしまった。
「これはアペリティフですから、後藤係長・・・これからが本番です」
いよいよ泣く子も黙る、スペインすごろく「パルチス」の登場である。
これは、すごろくの目の数だけコマを進め
コマ４つが早く上がった人の勝ち、というものであるが
ニッポンのすごろくと大きくちがうところは
「後ろからやって来たコマに食べられてしまう」ことである。
この無情さ。ゲームの後に怨念を残しそうな。
食べられた方は、コマを振り出しまで戻さねばならない。
４人でやっていると、自分以外の３人に絶えず
「食べられるかも・・・」
と、怯えながらコマを進めていかねばならないのだ。
「うおーっし！」
後藤係長は、今度は人が変わったように攻めまくり
さっきの不運がうそのように、ぐんぐんコマを進めていった。
もちろんわたしたちを、次々食いちらしながら。
「さっきのオカゲーム、本当はすごく悔しかったんだよねー。表には出さないけど」
クロ隊長につっこまれても、後藤係長の目の輝きは衰えることなく
ひたすら、盤の上にまっすぐ注がれていた。
結局、ぶっちぎりで勝利し、オカゲームの雪辱は果たされた。
が、べラが「手たたきゲーム」に後藤係長を誘うと
「あれっ・・・あれっ、逃げられない」
と、腕を硬直させ、まるでゲームになっていない。
クロ隊長は機敏な動きで、べラに対抗。リズム感もよく楽しそうである。
今夜のことで、後藤係長には不運か強運か、
とてもできるか、まったくできないかの
どちらかしかないことが明らかになった。
上品な料亭風のお店での「ゲーム宴会」。
隣にいたカップルのおふたりさん、ごめんなさいね。
（「ニッポン再発見記・１４」につづく」）
「くつ下人形・ココちゃん」も
いっしょに記念撮影。
このときはまだ、のどかに
夕食を楽しんでいた。
まずは「オカゲーム」。
後藤ＫＫの振り出し戻りに
大爆笑！その鼻息で
コマが飛んで行く～。
お仕事でお忙しいところ
「ゲーム宴会」におつきあい
いただきまして
後藤ＫＫ＆クロ隊長
ありがとうございました。
あ、それから後藤係長、
今はもう取締役をされて
いるのに、
20年前の役職名で
呼び続けてすみません。
お許しください。
わたしの「心の係長」
として、いつまでも
元気でいてくださいね。
