伊賀上野の旅。
夕夜は伊藤さんの
はからいで「伊賀牛」を
いただくことになった。
今日は6キロ歩いたので
べラはへとへとだったのだが
「バーベキュー」と聞き
ベッドからがばっと起き上がる。
ベラの故郷・ウルグアイで
バーベキューといえば
野性的なガウチョ風。
2メートル四方の網の上に
手のひらより大きい肉の塊が
ごろごろと置かれ焼かれる。
それを頭に描きながら
ベラは立ち上がったはずで
ある。しかし・・・
伊賀上野の焼肉屋に到着。
和風で高級な割烹風。
一歩、足を踏み入れたベラは
周りを見回しながら
「どこに、網があるの?」
と、焼き場を探している。
「ここでーす!」
テーブルのまん中のフタを
かぱっと開けてみせる。
「まさか・・・」
「そう、ここで焼くの!」
「うわぁ~、日本人は何でも
小さくしちゃうんだー」
本当にこんなテーブルの中で
肉が焼けるのか
疑っている様子。
「これがニッポンバーベキュー?
こんなに網が小さいんじゃ
お肉が乗らないよ」
「だいじょうぶ、お肉も小さく
カットしてあるから」
「・・・・・・・・」
ウルグアイでは友達同士で
バーベキューをしても
肉を焼く人は「一人」である。
「アサドール(焼く人)」と言い
みなこの人の指示に従って
網から上げられた肉を
食べていく。
伊藤さん&中岡さんとわたしが
肉の焼き加減などすっかり
忘れておしゃべりしていると
「ここ、焼けてるよー」
「今、食べないと、これはだめ」
「しゃべってないで!」
と、すっかりベラが
アサドールに変身していた。
肉を目の前にすると
ウルグアイ人の血が騒ぐのか。
「赤ワインで乾杯~」
「日本酒でカンパイ!」
「ビールで乾杯・・・」
と、やっているうちに
酔っ払ってきた。
お肉の追加注文をし
今日の忍者話に花が咲く。
ホテルに帰り、
スペインすごろく「パルチス」
を始めるが、酔っ払っている
ので、人のコマを動かすは、
サイコロは飛んでいくはで
もうメチャクチャ。
「あの、もう眠いんですけどー」
と、訴える伊藤さんを無視して、ゲームは続けられた。
情けは無用。
パルチスは、家族・友人をも食べて勝つ、非情なゲームなのだ。
居眠りをしている伊藤さんのところでペースが落ちるので
「もう、かわりに振るよー」
と、中岡さんが伊藤さんの分もサイコロを振る。
これでは、誰がゲームしているのかわからない。
最後に、ベラが手荷物に入れて大切に持ってきた
「くつ下人形・ココちゃん」を披露。これにて、お開き。
「ああー、これで眠れる!よかったー、おやすみなさい」
伊藤さんはうれしそうに立ち上ると、よろよろと部屋に消えていった。
明日は、伊賀上野の古い町並みを散策する予定である。
もちろんお目当ては「手裏剣を買う」こと。
このためなら、ベラは歩くと言う。
疲れきって眠りにつく4人。
忍者の里の夜は、しずかに更けていく。
(「ニッポン再発見記・16」につづく)