小説を3週間で書く

先日、大野さんとお話しているときに
「文学賞の応募」の話が出て、そのあと、急に小説が書きたくなってしまった。
思いついたら、もう体が動いているので、
「原稿用紙300枚~500枚」、というのが
どのような量をさすのかも考えず、書き出した。

毎日毎日、ピアノ教室のあいまに、せっせせっせと書いた。
夕食後も、寝るまで書いた。休日の執筆時間は13時間にも及んだ。
「もも、また、狂っちゃったの?」
ベラが横で、凧を手にしたまま、つまらなさそうにもじもじしている。
「いつ、凧を飛ばしに行くの?ねぇ」
まるで6歳児の母のようだな、と思ったが、しばらく考えてから
「今の私のプライオリティは、1に仕事、2に痛いところ」
と、答えた。
「2番の、痛いところ、って何?」
「だから、痛いんなら、すぐに対処するけど、凧あげなんて趣味は
今やってられない、ってこと」
「じゃ、書き終わるまで僕、待ってます」
ベラは素直に引き下がった。

そうして2週間がたった。
「応募の締め切り間に合わないんだけど、どうしよう・・・・」
どうやっても、今日明日で、完了しそうになかった。
初めて気がついたが、原稿用紙300~500枚を、
3週間で書こう、と言うほうがまちがっていたのだ。
「徹夜しても、だめと思う・・・・」
ベラは、黙っていたが
「じゃ、凧あげに行く?」
「はあっ」
本気で、怒りが沸いてくる。この大変なときに、凧とは。

「大野さんに、聞いてみたら?きっといいアドバイスしてくれるよ」
目がランランと光っているのが、自分でもわかる。
こんなに必死で、書きまくったのは、卒論のとき以来だ。
「間に合いそうにないが、どうしたら」
という鬼気迫る私のメールに、大野さんは静かに答えてくれた。
「なら、別の賞に応募したらどうですか」

そうか。その手があったか。
どうして、そんな単純なことに気づかなかったのか。
「ほらね、いつも的確なアドバイスしてくれるんだから」
そう言ったあと、ベラがぽつりとつぶやいた。
「あの、ももを止められるなんて、すごいな・・・」

人生には、Bプランというものがある。
きっとそれを大野さんは、伝えようとしてくれたのにちがいない。

 

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