この世の終わりか、XP(4)

私たちの新しいパソコンに、友人のS氏が仕事のあいまをぬって
ビールス対策のソフトだの、マイクロソフトのなんとかだのを
いろいろと入力してくださったおかげで
パソコンは、見ちがえるようになって我が家へ戻ってきた。
まさに「命を吹き込まれた」とは、このこと。

「すごいー、動いてる・・・」
お店で買って、私たちができたのは「箱から出すこと」だけ。
トライはしてみたものの、どうしても自力で立ち上げることができず
ましてやソフトの入力などまったく不可能であり
手順を教えてもらおうとS氏へ電話をすると
「もう触らないでください!うちへ連れて帰りますから」
と、S氏の家へと、引き取られて行った。

そして4週間。
このスピード感が、マラガなのだが
自力では何もできない私たちは、たとえ「3ヶ月かかる」と言われようとも
S氏の家で育ててもらうことに、心を決めていた。
おかげで友人にも「緊急の用事」でしかメールを出せず
すっかり音信不通になってしまい、ため息などついていた。

「まずは、新しい画面に慣れてください」
S氏は穏やかだが、きびきびとした口調で、パソコンを立ち上げた。
「いいですか、まず使う練習をしてください。
いろいろクリックしてみて、何が出てくるかどんどん試してみてください」
S氏のの指先は、魔術師のように軽くキーを叩く。
そのたびに、めまぐるしく画面が変わり、
これまで見たこともない「未知の世界」が、私たちの目の前に広がっていた。

「おおーっ、これは・・・」
文字の書体が変わっただけでも「大異変」なのに
デザインそのものが、大幅に変わっている。
なにより「クリックする場所」が、まったく変わっているではないか!

2年かかってせっかくおぼえた「クリックする場所」。
それが、一瞬のもとにかき消され
今日からすべて「新しくなる」と言う。
「カタストロフェ」は、こんな身近にあったのだ。
パソコンを「消す」場所さえ、右端に「えいやっ」と矢印を動かさないと
現れない。
「・・・・・・・・・」

「じゃ、また来週!がんばって」
S氏の後ろ姿を見送りながら、氏の気の遠くなるような「忍耐力」に
文字どおり、頭が下がった。

(この世の終わりか、XP(5)につづく)

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