先日、国際電話で、母が言った。
「人生ころんでもいいから、道でころばないように!」
一瞬、不思議な気持ちに包まれた。
それがどうしてか理解するのに、数秒を要したほどだった。
わたしの脳みそがはじき出した答えは
「ふつうは逆では?」
というものだった。
「道でころんでもいいが、人生でころばないようにね」
というのが、物事の順番では、ないだろうか。
最近、日本語が怪しいので、こうした不思議感を
瞬間的に、解明できなくなってしまっている。
「お母さんなんか、人生ころんでばっかり!
でも、だいじょうぶ。ちゃんと生きてこれたから。
それより、道に気をつけなさいよ。ケガしないようにね」
その瞬間、不思議な気持ちが、わたしの中に流れ込んだ。
「そうか。人生、ころんでもいいのか」
ころんでも、そのたび何度でも、立ち上がればいい。
人生ころびまくっても、道でころぶよりは、ましなのだ。
けがさえ、しなければいい。
そう言い切ってくれる母を、ありがたいと思う。