クリスマスになると、私はいつも
オー・ヘンリーの「賢者の贈りもの」を思い出す。
そしてそのあと、ため息などつきながら
「さて、今年は何を贈ろうか・・・」
とマテ茶を片手に、ひなたぼっこしながら考える、というのが
12月の光景なのだ。
クリスマス前後は、値段が高いので
わたしたちはいつも1月のバーゲンが始まってから買いに行く。
ここのところ、その贈りものというのが
「自転車のタイヤ」「テレビのリモコン」「のこぎり」など
ほとんど日常必需品であったのだが
今年は思いきって、欲しいものをお互い言ってみることにした。
「で、ももは、何が欲しいの?」
「私はねー、ロジョ・デ・リエンソがほしいっ!」
「えっ、イロ・デ・ディエンテス、そんなものでいいの?」
「はあぁ?」
ちがう。なんで、そんなものが、欲しいんだ。
「ちがうっ、ロジョ・デ・リエンソ!(キャンバス地のロール)」
「ああぁ~、安くていいなって思ったんだけど・・・」
ちなみに、イロ・デ・ディエンテスは、歯をみがく糸である。
「で、べラは何がほしいの?」
気を取り直して、聞いてみる。しばらく考えていたが
「僕ね、『ミロンガ・デ・アンヘル』の楽譜がほしい・・・もも、書いてくれる?」
それはアストール・ピアソラの名曲で、私も実はずっと弾きたいな、と思っていた曲だ。
「来年、いっしょに弾こうよ、ねっ」
べラの言葉が、心に染み込む。
したいことより、するべきことに追われた一年だった。
今年は、生活費をひねり出すのに忙しくて
新しいレパートリーを作っている時間がまったくなかった。
「新しい曲づくりをしたい!」
そればかりを思って過ぎた、2014年だった。
「そうだね、さっそく編曲を始めるよ!」
心がふくらむ。考えるだけで。それが芸術のすばらしいところ。
まず自分が元気を、エネルギーを与えられる。
私はニッポンから戻ると、生活のパターンを一新した。
まずは、起床時間を2時間、早めた。
そして眼が覚めると、夜中だろうと早朝だろうと
すくっと起きて、仕事を始める。
待っていたら、音楽に使う時間は一生、ないだろう。
それが今年、私が身をもって学んだことだ。
スペインの不況は、まだまだ続く。
演奏がない分、朝から晩までピアノレッスンをして生活費を稼ぎ出していたので
編曲、作曲、練習する時間なんて
お日様の出ているときにはひねり出せなかった。
それが、2014年。
でも、2015年は、ちょっとちがう。
電子ピアノにヘッドフォンをつければ
夜中だって、早朝だって、ピアノに向かうことはできる。
時間は、自分で作り出せばいい。
2015年は、きっと新しい年になるだろう。
「チュニジアの夜」「ドス・ガルデニアス」「バッハやショパンをJAZZ風に」
弾きたいものが、たくさんある。
その強い思いが、私をいつも前に向かって歩かせてくれる。
そして、どんなにつらいときでも
私の毎日の中から、べラのバイオリンがとだえたことはなかった。
毎日、毎日、何があってもべラは必ず、弾く。
そのことに気づいて、びっくりした。
私のピアノは、よくとだえていた気がする。
大切にとっておいたいたいただきもののケーキを
昨日べラに、一口で食べられたばかりだが
許してあげることにしよう。